未来のコミュニティ研究室公開オンラインミーティング記録4 『飛騨市ファンクラブ』
2020年3月9日、ゲストハウスやまなみにて「飛騨市関係案内所オープンに向けた未来のコミュニティ研究室公開ミーティング」が開催されました。地域創生のキーワードとして、近年盛んに取り上げられている「関係人口」。今年度、未来のコミュニティ研究室では、このホットなテーマにいち早く着目し、関連した研究と実地プロジェクトを並行して進めてきました。本イベントでは、1年間の成果の発表と来年度の活動の紹介、さらにはより良い活動の実現に向けたワークショップを行いました。その様子を、5本の記事に分けてご紹介します。
第4本目の本記事では、3本の実証プロジェクトのうち「飛騨市ファンクラブ」の発表の模様をお送りします。
▼前回までの記事
上原:では最後の発表は「飛騨市ファンクラブ」です。こちらについては、他の2つのプロジェクトとは違い、元々あったものをさらに進化させるという形でプロジェクトを進めてまいりました。それでは、課題オーナーの上田さん、よろしくお願いします。
上田 昌子 氏(以下、上田):よろしくお願いします。飛騨市役所 地域振興課の上田です。私の自己紹介を簡単にさせていただきますと、今は飛騨市ファンクラブに加え、高校の魅力化やふるさと納税、関係人口事業など、地域のファンを作っていく活動に日々奮闘しているところです。
それでは、私の方から「飛騨市ファンクラブ 進化プロジェクト」についてご報告させていただきます。
飛騨市ファンクラブを始めたきっかけ
まず、飛騨市ファンクラブについてですが、人口減少という背景を受け、飛騨市の地域の活力をどう維持していくか、地域資源をどう守っていくかを考えた上で、飛騨市に心を寄せてくださる地域外の方と直接コミュニケーションを取る手段として、3年前に設立した仕組みになります。
自治体のファンクラブは全国にもいろいろとありますが、飛騨市は楽天と連携し、会員証に楽天Edy機能をつけることで常に飛騨市を意識してもらおう!という工夫をしております。これは全国初の取り組みとして、メディアにもたくさん取り上げていただき、なんと1日に200名以上の申し込みがあった日もありました。
会員の皆様とは、バスツアーやファンクラブの集いなどの活動を通して、直接コミュニケーションを取ることのできる機会を少しずつ設けながら、約3年間運営してまいりました。
関係人口プロジェクトに参加した経緯
ただ、設立から2年経過したところで、「企画や内容がマンネリ化してきたのでは?」「飛騨市の魅力がしっかり伝わっているのかな?」などの不安やモヤモヤが少しずつ出てきました。そこで、「もっと会員さんたちとつながりたい」「会員さんと市民の方々がもっと繋がってほしい」という想いが強くなってきたのですが、自分だけでは飛騨市やファンクラブが外からどうみられているのか?が分からなかったので外の視点で見てくれたり、飛騨市を一緒に進化させたりしてくれる仲間が欲しい!という想いで、このプロジェクトを始めました。
つむぎやの目標とメンバー
プロジェクトのメンバーはこちらの7名で、「つむぎや」というチーム名で活動を始めました。各メンバーの加入理由は「ファンクラブの仕組みに興味を持って」「飛騨市の未知の魅力を知りたい」など様々でしたが、それぞれが得意分野を生かしながらうまく役割分担をして活動を進めていきました。
そして、私たちはプロジェクトを進めるにあたり、以上 (資料の3つ) の仮説を立て、「つながりを深める」ということを大切に進めていきました。
目指すビジョンとしては、「人口は減っているけれども、ファンが増え続けるなんだかすごい地域」であると、内外から認知されるような地域になることです。そして、約10年後(2029年)には、ファンが人口を超える!というワクワクなビジョンを持ちながら活動を進めました。
1年間の活動記録
1年間の活動を振り返ると、月に1回以上イベントを実施してきました。ファンの集いやバスツアーは以前から継続してやってきましたが、今年はそれらに加えて会員さんとのつながりを増やそう!ということでお手伝いのプログラムを入れたり、会員さんにアンケートをとったりしました。
見えてきたこととしては、まずファンクラブに入会するきっかけとして以下のような理由があることです。
2つ目は会員さんの特性と関わり方に次のような様々なタイプがあることです。
そして、私たちは「関係人口になるポイント」を検証していく中で、まず1つ目に飛騨市ファンクラブは、いろんな貢献の形を用意して接点をつくるということが重要ではないかと考えました。
今年度、飛騨市ファンクラブは、Facebookのページを始めたり、メールマガジンを積極的に発信したりしてきました。ふるさと納税やお手伝いプログラム、観光情報など、日常的に目についたり、関心を高めたりするために、発信を強化してきました。
また、関係人口になる2つ目のポイントとして、「労働的な貢献をしたいと思う人が多いのではないか?」と考えてアンケートをしたところ、84人中150人から草刈りや雪かき、イベントの運営スタッフやPRなどのスキル提供などをしたいという回答をいただき、こうした労働的な貢献をしたいと思ってくださる方がいるということが分かりました。この理由としては、もっと地域の人と交流したい、飛騨市に貢献したいというものが挙げられました。
活動の成果
1年間活動してきた成果としては、まずファンクラブ会員が4,200名を突破したことです。内訳としては市外の会員さんが8割、市内の会員さんが2割ということで非常に理想的な形だと思っています。
また、今年度始めたFacebookページは現在フォロワー数が700名となっています。こちらはまだ市民の方の方が多いので、もっと市外の方にも発信していく可能性を感じています。
最後に、お手伝い会員は70名となっており、こちらはおこめ部や石棒クラブのお手伝いをプログラム化して発信してきたことも相まって、会員数の増加につながりました。
この1年で特に感じていることとしては、お手伝い会員が発掘できたということと、お手伝いを通して今までコミュニケーションを取れていなかった会員さんとコミュニケーションを取れるようになったこと。それから、お手伝いをした方が新しくご友人を連れてきてくださってファンが増えるという事例があり、とても嬉しい発見でした。
そして、こちらは飛騨市のファンの方々を3つに分けてみたものです。Aは観光客やふるさと納税者など、「飛騨市を知っている」タイプ。Bはイベントに参加したりファンクラブに参加したりなどの「参加・PR」タイプ。Cはもっとつむぎやのメンバーなどもっと運営に入ってきているような「参画・お手伝い」タイプを指しています。今の数字的にはこんな感じかなと思っています。
また、会員との関係性についてですが、ファンクラブ会員が地域課題解決のキーマンになるのではないか、と強く思っております。特に、個人レベルのコミュニケーションが増えているので、ここから飛騨市を活性化に導くような協働者が増えていくのではないか?と期待しています。
また、この1年間の取り組みで「飛騨市に協力したい!」というお声をたくさんいただいたり、飛騨市のメディア掲載情報を市外の方々からいただいたりなど、飛騨市ファンクラブが会員に育てられているということも強く実感しました。
飛騨市ファンクラブでは、1日1回必ずFacebookで投稿をしています。これにより、Facebook上でコミュニケーションが取れることに加え、いいね!の数によってどんなことに興味があるか検証することができるようになりました。
ちなみに、グルメや景色、人の投稿にいいね!が多くつく傾向があります。
あと、今年度試験的に実施したお手伝いプログラムですが、参加者は「特別な体験ができて楽しい」、地域の方は「人が集まらなくて困っているので来てくれて助かる」とそれぞれ感じているので、win-winの関係を作ることができました。
そして1年間の活動を通して、以下の通りプロジェクトメンバーの意識も変わったようです。
私から見た成果としては、メンバーのアイディアを取り入れながら1年間挑戦し続けられ、次年度以降の方向性も導き出せたと思っています。そして、飛騨市ファンクラブの実働部隊は必須だと感じたので、来年度以降も継続していきたいと思いました。
飛騨市ファンクラブがどのように進化したかというと、今までは 市長や自然、カミオカラボといった中心的な人や団体など単体に人が引き寄せられている、という感じだったのですが、現在は会員同士がつながってコミュニティができているという形になっています。このモデル自体ももっと全国に発信していきたいと考えています。
今後の展望
ファンクラブの展望としては、これまでは会員証の特典や会員同士の交流促進というものが挙げられていましたが、今後は飛騨市内の面白い取り組みの発信や、この後説明する飛騨市関係案内所「ヒダスケ」と協働しながら、様々な関わり方を提供していきたいと考えています。
そして、関係人口となる接点づくり、コミュニティづくりのサポートを機能として持っていきたいと思っています。
飛騨市がファンづくりのメッカと呼ばれるように、みなさんと育てていきたいと思っています。
上原:上田さん、ありがとうございました。
Q&A
それではたくさん応援コメントやご質問をいただいておりますので、1点読み上げさせていただきます。
「地元民として飛騨市ファンクラブに入っていますが、どのような協力ができるかわかりません」ということですが、いかがでしょうか?
上田:そうですね、地元の方しか知らない面白さやネタを一緒に発信していきたいと思っているので、ぜひ一緒に発信していただきたいと思います。実働部隊(つむぎや)に入っていただいても心強いです。それから、地元の方には地域外の人を飛騨市の面白いモノや人につなげる役割を担っていただきたいと思っておりますので、そういった活動を一緒にやっていければ良いなと思っています。
上原:ありがとうございます。それでは、時間になりましたので「飛騨市ファンクラブ」の発表は以上になります!上田さん、ありがとうございました!
ライター:蛯谷夏海
東京大学 大学院農学生命科学研究科所属。2019年3月に飛騨の旅館のお手伝いをしたことをきっかけにFCLを知り、参加。修士論文では「関係人口の具体化」をテーマに研究に取り組む。地方を飛び回って現地の人と交流するのが大好き。
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